どようのつちのひクラシック音楽

どようのつちのひ 70

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ショパン バラード 第1番(1831-1835)

バラードとはフランスにルーツを持つ古い詩の形式。
ショパンは古い歴史譚を謳った詩にインスピレーションを受けてこの曲を作曲しました。
ちなみに曲名にバラードを用いたのは器楽曲としてはショパンが元祖。

ソナタ形式という伝統的な音楽形式を用いる事で詩の様な枠組みの中で音楽が展開されていきます。形式的でありながら、幻想曲のような雰囲気の中に確かな感情の起伏やドラマを内包するショパン初期の代表作の一つです。


この曲の出だしを聴くとどうしてもこの曲を思い出してしまいます。

ショパン 幻想ポロネーズ(1846)

こちらはショパン晩年の作品。

歌い出しだけでなく、音楽が持つ幻想的な雰囲気や舞曲系のリズムなど、どことなく似ている所も多いと思います。


<おまけ>

今回の曲は羽生結弦選手が平昌五輪のSPで使用していたので取り上げたのですが、本来は9分半程度の曲なので制限時間約3分のSPで使うにはアレンジやカット等の編曲が必要になります。

フィギュアは時々しか見ない素人で「この手のカットはざっくり大雑把にやってるもんだ」と言う先入観があったのですが、試しに今回のプログラムのカットを確認しようと楽譜とにらめっこしてると想像以上に細かいカット処理が行われていて少し驚きました。

羽生結弦選手のカットは中間部に有る明るく華やかな部分はバッサリと切り落とし、シリアスなムードで曲調を統一してあります。また、同じフレーズが繰り返される小節は繰り返しを1つ減らして時間の短縮を図ると共に、圧縮された曲をより自然な流れにする事に一役買っています。

奏者は世界的ピアニストのクリスティアン・ツィマーマンとの事ですが、編曲も彼が行っているのでしょうか。いわゆる「繋ぎ」も自然で上手い編曲だなと感じました。

また、過去には浅田真央さんがエキシビションでこの曲を使用しています。せっかくなのでこちらの編曲も確認してみました。

こちらは中間部の華やかな部分をメインに据えているのが羽生選手とは対照的。曲の最初と最後こそ共通ですが、それ以外はほとんど別の曲と言って良いくらい採用箇所が違います。かたや競技、かたやエキシビションと言う事で同列の比較は出来ませんが、採用箇所に選手の性格がよく表れているなと感じました。

ただし、浅田さんの方は4分に圧縮するにはドラマが多すぎて、原曲を知っているとカットにどうしても違和感が残ってしまうというのが正直な感想です。羽生選手の方も有るはずの大きな展開をバッサリと無くしているのでこれはこれで音楽としてはかなり勿体無い事をしている訳ですが…。半分以下にまで曲を圧縮している以上、こればかりは仕方ない事です。

という事で曲が気に入った方は是非フルバージョンも聴いてみて下さい。10分足らずの曲とは思えない程に豊かな表情を見せてくれる名曲です。


<付録>羽生結弦選手と浅田真央さんそれぞれのカット割

青が羽生選手、赤が浅田真央さんです。

間違いもあるかもしれませんが、概ね合っているはず。
採用箇所の違いが視覚的にはっきり分かって面白かったです。

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※画像の楽譜はIMSLPよりパブリックドメインの物を使用しています

画像は左上から右方向に並んでいます。(多少)大きめの画像は、画像を保存するか、右クリックから原寸で表示で見れるはず。