前回、前々回からの続き。
と言っても今回は編成の話では無く舞台そのもののお話です。
音楽関係だけでなく演劇等の舞台関係者にも馴染みのある話だと思います。
オーボエは「上手」でフルートは「下手」
「じょうず」「へた」では無く「かみて」「しもて」と読みます。
舞台での位置を示す言葉なのですが、舞台左右だと客席から見て左右なのか演者から見て左右なのかが分かりにくく、しばしば混乱を招きます。そのために舞台では上手下手という呼び方が一般的になりました。
客席から見て左側が下手、右側が上手です。
前回、前々回と使ってきた左右は客席を基準にしてお話していました。
上と下に表現されるように、日本の文化では上手の方が位が高いとされています。西洋発祥のオーケストラでは殆ど意味は無いのですが、日本では指揮者は下手から入場するのが一般的です。海外では特に決まりはありません。
上手下手の文化は自体は中国から伝来したそうですが、その中国では王朝が変わる毎に上手下手の左右が入れ替わったりしていた様で、日本だけが変化すること無く現在まで受け継がれています。
ここからややこしい話を少々。
まずは雛人形の右大臣と左大臣。
これは右大臣が下手、左大臣が上手に座ります。我々から見ると左右が逆に見えますが、これは最上段のお雛様目線での左右です。左右で覚えるよりも上手下手で覚えて覚えた方が勘違いしにくいでしょう。右大臣は若く、左大臣は年配でデザインされているのでどちらの位が高いかはすぐ分かるでしょう。
また、右大臣左大臣で覚えると紛らわしいのが「右に出る者がいない」という諺です。文字通り受け取ると右大臣の方が偉そうですが、ここで言う「右」は雛目線では無く民衆目線です。要するに一番上手に居る人という事ですね。
余談ですが、国際的にはこの左右のルールは逆で、下手側に偉い人が立ちます。現在の天皇陛下の並びを見て貰うと分かるのですが、我々から見て左側に陛下、右側に皇后様が立たれています。このルールに則り、雛人形の1段目だけは下手に男雛、上手に女雛を飾る事が昭和時代頃から浸透した様です。京都など関西では従来通り上手に男雛を置くそうです。
海外では上手下手という表現は存在しませんが、それに対応する言葉はあります。上手が「Stage left」下手が「Stage right」です。
演者目線で左右が決まっているので、右大臣左大臣問題は案外英語圏の方が感覚的に分かるのかもしれませんね。