リスト 交響詩「レ・プレリュード」(1854)
プレリュードとは前奏曲の意味なので完全に和訳すると、交響詩「前奏曲」という曲の形式が名前の少し不思議な曲名になっています。ちなみに、この表記でも良く見かけます。交響詩「前奏曲(レ・プレリュード)」と両者を併記するパターンが一番多いかもしれません。
この曲は「人生は死への前奏曲」というテーマに基づいて作られました。ちょっと不思議な曲名もこれが理由です。あくまで人生についてを描いた交響詩。
「死への始まり」として重苦しく開始して、愛や苦悩などが描かれます。全編を通して2つの主題のみで描かれていくのですが、場面毎に描かれる音楽は同じ主題とは思えない程の変化を見せます。
また、人生の終着点へ向かう音楽の最後が力強い行進曲というのが印象的な曲です。
死へ向かう行進曲というと、ベルリオーズの幻想交響曲も思い出します。あちらは「断頭台への行進」なので曲の意味する所は全く違いますが。
ナチスドイツがワーグナーの音楽をプロパガンダに利用していたのは有名な話ですが、この曲もラジオ放送で用いられていました。リストもワーグナーも同じ「新ドイツ楽派」と呼ばれるグループに属していた為か、この曲も心なしかワーグナーっぽい雰囲気を感じます。
この二人は交流も有り、ワーグナーが音楽界で対立した際にはリストが擁護したり、ワーグナーが革命に関わって指名手配を受けた際は亡命先としてリストが滞在していたスイスへと逃げたりと様々なエピソードが有ります。
また、ワーグナーはリストの2歳年下なのですが、ワーグナーの妻はリストの実の娘(コジマ)です。
流石にこれにはリストも反対した様ですが。
更に突っ込むと、コジマはワーグナー信奉者だったハンス・フォン・ビューローという指揮者と既に結婚しており、子供も居るという状況からの不倫劇なので、大変に複雑な関係だったりします。