演奏会を開催するに当たって一番大きな決めごとは曲目の選定でしょう。
それはプロもアマチュアも変わりません。
ただし、選曲の方向性に関してはそれぞれに異なる事情が有ります。
プロオケであれば選曲は集客に直結する部分です。
「集客≒収入」となる以上、マイナーだったり人気の無い作品はどうしても敬遠されがち。
そういった曲は、定番曲と「抱き合せ」でプログラムが組まれるのが常で、全曲マイナー作曲家&マイナー曲のプログラムというのは滅多な事では見かけません。
また、プロの演奏会は「定期演奏会」と「特別演奏会」の2種類に大別する事が出来ます。
定期演奏会は文字通り定期的に開催される演奏会で、シーズン通し券が販売されるなど、固定客向けの演奏会です。楽団によって方向性は様々ですが、シーズン毎に決められたテーマに沿った選曲が多く、マイナーな掘り出し物曲や現代作曲家の初演などが取り上げられる事は後述する特別演奏会より多めです。楽団を気に入って足を運んで下さる固定客向けというのが大きいのでしょう。
特別演奏会は定期演奏会以外の不定期に行われる演奏会で、企業などが依頼して開催されるケースが主です。特別演奏会での選曲経緯は様々だと思いますが、人気の定番曲が選ばれる事が殆どです。スポンサーの支援が有る分、著名なソリストを起用したり、大編成の交響曲が演奏されたりと、特別演奏会ならではの演奏が聴けるのが特徴です。
プロの選曲が費用対効果が重視される一方、アマチュアの選曲は事情が異なります。
アマオケであれば集客はあまり重要視されません。マイナー曲も臆せず選曲できます。
ただし、アマチュアの選曲は奏者のモチベーションに直結します。
その点で強いのはやはり定番曲で、マイナー曲を選ぶ際は定番曲との抱き合わせになりがちなのはプロの定演と同様です。
また、アマチュア特有の問題が2つ存在します。
1つ目は技術難。
当然プロほどの技術は持ち合わせていないので、演奏困難な曲というのが出てきます。
個人技が厳しいタイプの曲なら誤魔化しつつ凌ぐ事も一応可能なので、無理やり通る事も有るのですが、アンサンブルが難しいタイプの曲は曲として成立しないレベルの問題になりかねないので敬遠されます。
2つ目が「乗り番」の問題。こちらはより深刻です。
プロと違いってアマチュア奏者は演奏がしたくて演奏会に参加しているので、出番が無くては話になりません。
よく議論に上がるパートがトロンボーンとチューバで、ベートーヴェンらロマン派初期の時代だとそもそも使われない事も多く、プロでは頻繁に演奏されるような有名曲で有っても選曲が難航する事がしばしば。そういった選曲になった場合は、他の選曲で優遇するなど何かしらのフォローが成されます。他にも、打楽器パートを複数人抱えている楽団だとティンパニ1台の曲でも同様の問題が起こります。
意外(?)な所だと、この曲が乗り番問題でよく敬遠されます。
ブラームス 交響曲第3番より第3楽章(1883)
表向きの編成は(チューバを除く)主要楽器が全て有る曲なのですが、2-3楽章に出番の無い楽器が多数存在します。
それだけなら、練習時に1,4楽章と2,3楽章で区切るなりすれば良いのですが、トロンボーンだけは出番が無いのが3楽章だけだったりと練習スケジュールが妙に組みにくい曲となっています。
更に、ブラームスの全4交響曲の中では恐らく一番マイナーである上に、技術的にも少し難し目という事で、アマチュアでは意外なほど演奏されない交響曲です。個人的には大好きな交響曲なんですけどね…。
アマチュアでも1,2,4番の交響曲は頻繁に演奏されています。