「演奏家の財産」
曲に対する理解とその表現、演奏時の身体の使い方など、演奏家の財産と言えるものはいくつか有るだろう。その中の1つに運指がある。
楽器をやらない方には運指と言われると「この音にはこの指」と1つの音に対して1つの指しか存在しないと思われがちなのだが、実際には替え指という物が数多く存在する。
例えば「本来の運指より良く響く運指」
これの使い方は分かりやすい。音量が欲しい時に使う。
「よく響くならこれを基準の運指にすれば良いのでは?」と思うかもしれないが、この手の運指は複雑であったり、他の音に対して響きすぎて流れで用いると浮いてしまう事がある。前者はともかく、後者はフレーズ感を損ないかねないので結構使い所を選ぶ。だから音のコントロールがしやすく、運指も容易な遅いパッセージなどでは良く使用する。
鳴りにくい運指も有るには有るが、それはあまり使われない。フルートに関しては音を鳴らすよりは抑える方が楽だからだろう。
「少し音程の違う運指」もある。
フルートは音量を上げると音程が上がりがちな楽器で、基本的には身体のコントロールで制御するものの、音程の下がる運指を選択する場面も少なくない。逆に音量を下げると音程も下がりがちなので、そういう時は音程が上がる運指を使う事もある(こちらは身体のコントロールで解決する場合が多い)
他には「トリル用の運指」や「高音が当てやすい運指(大抵難しい)」、代わり種では現代奏法用の「重音の運指」も存在する(倍音を同時に鳴らす事で和音の様な音が出せる)
そういった運指を曲や状況に応じて選択出来るのも演奏家の重要な財産だ。運指は人から教われるが、有効な運指は個体差やクセなど楽器によりかなり違うので、運指の選択は個人の経験に依る所が大きかったりする。