どようのつちのひクラシック音楽

どようのつちのひ 17

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「ステマネに見る演奏会の流れ」前編

指揮者や楽器の奏者は何をしているのか大体イメージできると思し、恐らく想像されている通りだと思うのですが、裏方の仕事と言うのは良く分からないのではないでしょうか。今回はその中でも演奏会で一番重要なポジションの裏方である「ステマネ」のお話。


「ステマネ」はステージマネージャーの略です。どの演奏会にも必ず1人は居るポジションなので、大概の人が略して呼んでます。人によっては「舞監」とも言ったりします。こちらは舞台監督の略。単純に英語か日本語かの違いですが、演劇系の人程後者で呼ぶ様な印象はあります。

ステマネの仕事は多岐に渡ります。演奏会当日は勿論の事、それまでの準備などでも仕事が沢山有ります。ただ、準備段階での仕事はプロとアマで結構異なったりするので、今回は演奏会当日の仕事を中心に。
ステマネの仕事は演奏会のほぼ全てに関わって来るので、演奏会全体の流れも含めて紹介しましょう。

・舞台図面とタイムスケジュールの作成&劇場打ち合わせ
これは準備段階のお仕事ですが、重要かつプロアマ共通なので取り上げます。
準備段階では一番重要な仕事です。舞台図面と言うのは演奏する劇場のサイズに合わせてひな壇の構成やオーケストラの椅子の配置などを記入した物です。曲ごとに編成が変わるなら、それぞれ図面を用意します(簡単な変更なら1枚にまとめたりもしますが)
舞台のサイズにちゃんとオーケストラが収まるのか、椅子の数は足りているのか(高さ違いの椅子とか複数種類の椅子を持っている劇場だと意外と足りなくなる)、使うひな壇のサイズは…などを劇場の人にちゃんと伝わるように作成して、それを元に打ち合わせします。使い慣れた劇場ならお互いあまり苦労しませんが、初めての劇場だとかなり綿密に確認します。
劇場打ち合わせでは図面の確認の他、会場入りから撤収までの当日のスケジュール、照明の設定、マイクなどの備品を使うかなどの確認を行います。
当日スケジュールはステージリハーサルの時間は勿論、演奏会の詳細な時間組みについても打ち合わせます。そのために曲ごとの時間を予め計ったり、入退場などの時間を計算して、開演から終演までの分刻みの詳細なスケジュールを作成します。これが甘いと撤収時間をオーバーして違約金という事態になりかねないので、ある意味図面よりこちらの方が重要かもしれません。

・楽器の手配と運搬
ヴァイオリン程度の小さな楽器は基本各自会場まで持参しますが、打楽器やハープに「各自持って来い」と言うのは酷な話です。この運搬作業もステマネの仕事です。運搬作業自体は業者に任せたりもしますが、手配はステマネがやります。特殊な楽器が必要な曲で、その楽器を自分の楽団が所有していなければレンタルを手配したりそれを取りに行ったりと結構大変です。
また、楽器を運ぶためには各楽器の扱いを把握していなければならないので、奏者でないにも関わらず(と言っても普通は何かしらの楽器経験者ですが)楽器の扱いは奏者並の理解が要求されます。

・搬入と舞台の台組み
やっと劇場入りです。運搬してきた楽器を劇場に持ち込み、先に作成した図面を元に舞台の台組みをします。全ての奏者が前の奏者に被ること無く指揮者やコンマスを見れる様に椅子の配置は入念にチェックします。譜面台も高さの調節は勿論、足の向きまで考えて配置しています。全ては奏者に演奏に集中してもらうための配慮です。
経験が物を言う所で、ここはステマネの腕の見せどころ。

・ステージリハーサル
台組が完了したら本番前の確認練習。練習そのものは奏者と指揮者間の仕事ですが、曲毎に配置が変わるのであればその都度配置を変更しなくてはいけません。これも勿論ステマネの仕事。
ちなみに配置を変更する際は、配置を戻す際ズレることが無い様に舞台上に色テープで目印を付けます。この作業を「バミる」とか「バミり」とか言います。「場を見る」から生じた用語だそうで、音楽だけでなく演劇などでも用います。

余談ですが、他に劇場独自の要素として「寸法は全部尺単位」というのが有ります。「サブロクの板」とか言うのですが、これは三尺×六尺の板の事です。ちなみに厚さはどの劇場も基本4寸で共通しています。


今回はここまで。後編で開場以降の流れを紹介します。
せっかくなので架空の演奏会のプログラムを組んでそれっぽく書いてみようかな?