どようのつちのひクラシック音楽

どようのつちのひ 53

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個人的に中毒性の高い曲。

ドヴォルザーク 交響曲第5番より 第4楽章(1875) [30:10~]

冒頭で提示されるシリアスなムードを纏ったテーマがとても格好いいこの楽章。こんなに格好いいテーマがまさか開始数分で喜びに満ち溢れた楽天的なテーマに変化するとは思わないでしょう。それ以降の音楽はこの楽天的なムードが大部分を占めます。冒頭のアレは何だったのか。

とはいえこの急激な変化は中々癖になります。

随所に見られる牧歌的な美しさもドヴォルザークならではで素晴らしい。
交響曲第9番「新世界より」の2楽章のコーラングレのソロに代表されるように、ドヴォルザークの音楽はとても民族的で、どんなに美しい旋律であっても天上の様なこの世ならざる雰囲気とは無縁なのが特徴です。人や自然(と鉄道)への愛に満ちた音楽。天上の音楽の最たる例は神への捧げ物として作曲をしていたブルックナーでしょう。どちらの音楽も美しいのですが、どちらが心に染みるかは人によって好みが別れる所だと思います。

この曲で個人的に気に入ってる部分は終結部(動画だと40:50~)
これがなんというか…とてもダサい(褒め言葉)
主題を散々連呼しつづけるだけでも結構ダサいのに倍速で繰り返すダメ押し付き。しかもそれがもう1回続きます。流石に3度目は無い…と思いきやオクターブの跳躍の繰り返しで同じ事をやってきます。これがもう最高にダサい。

…褒めてるんですよ?

ここは何度聴いても笑顔になります。妙な中毒性。
繰り返しになりますが、冒頭のアレは何だったのか。

ドヴォルザークの交響曲と言えば9番か8番、次いで7番が取り上げられる事が殆どだと思いますが、5番と6番の間に作風の転換が見られるので、この作風での最後の交響曲と考えると中々貴重な曲です。


ちなみに、この曲は出版順の関係で当初は「交響曲第3番」とされていました。6-7-5-8-9の順で出版されているので、9番の「新世界より」の古い譜面を見ると「交響曲第5番」と記されていて一瞬ぎょっとします。

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交響曲第5番と記されていますが、副題に「新世界より」と書かれているのが分かると思います。


余談。
今回紹介した映像の演奏会場はチェコ、プラハに有るルドルフィヌムと言うコンサートホール。
このホールはこけら落としが1885年と大変に古く、ヨーロッパ中でも現存する最古級のコンサートホールです。チェコ・フィルハーモニーの本拠地であり、ドヴォルザーク自身も指揮者としてこのホールで演奏を行いました。


さらに余談。
この映像、4楽章の冒頭で弦楽器(多分チェロ)が一人盛大にフライングしています。冒頭でやらかしてるので相当目立ってますが、生演奏だとこの手のミスって意外と有るんです。出る小節が1小節早かったりとか、逆に長い休みで出番すっぽかしたりとか。なにせ一度に80人近くが演奏しているので、どこかしらでミスは起こってしまいます。

聴く方としては起きて欲しくない欲しくないミスですが、奏者目線だとミスする気持ちが分かる箇所も多く、どうしても同情的になってしまいます。
でも、冒頭でやるのはちょっと無いかなあ…。

私は楽譜を1段読み飛ばした事と、ソロ前でぼけっとしていて危うくソロを吹き損ねそうになった経験があります…。